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盛岡地方裁判所遠野支部 昭和31年(わ)5号 判決 1959年10月14日

被告人 鈴木鉄雄

明四二・七・一八生 森林組合理事

主文

被告人を一年六月の懲役に処し其執行を二年間猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

被告人は当時唐丹町森林組合理事で同組合は釜石市から同市有唐丹町大曾根一八番の一(通称大曾根山)同一七九番(通称七倉山)同二八番の一及び同上八六番(通称石塚山)の森林間伐等を請負い作業したが

一、被告人は木村養松と共謀、大曾根山に杉丸太一一〇石〇三、松丸太二石六二の各間伐材を占有中昭和三一年四月三〇日前記森林組合のため不法に領得すべく同森林組合事務所で釜石市長に対し検知報告するに際し記載せず同山には間伐材を占有せざる如く装い自己の占有する釜石市有の上記間伐材を横領した。

(証拠略)

二、被告人は同組合が釜石市から払下げた大曾根山の間伐材杉丸太二五〇石八一及び松丸太一一石二四と払下外の被告人占有中の間伐材杉丸太九石四七及松丸太七石七八が混和し識別不能となり其結果釜石市及び唐丹森林組合の共有となつた間伐材全部を昭和三二年五月一日同森林組合事務所で勝手に斎藤三良に対し五五万八、〇〇〇円で売却した。

(証拠略)

三、被告人は木村養松と共謀、不法に領得すべく同年六月一〇日頃から同年八月中旬頃までに前記石塚山の松立木一一四石七七及び杉立木一〇五石六五分を情を知らない荒屋敷徳太郎に伐採させた。

(証拠略)

判示一及び二は刑法二五二条一項に該当する三は森林法一九七条に該当、接続一罪と認める二以外は尚刑法六〇条に該当、三につき懲役刑を選択、刑法四五条前段、四七条及び一〇条に依り横領罪の法定刑を標準とする処断刑の範囲内で宣告刑を量定、其執行猶予に同法二五条、訴訟費用の負担に刑訴一八一条を適用

起訴状公訴事実第二の(一)は被告人が判示事実一の検知報告時外になお七倉山に杉一二二石四、松四〇五石一八、石塚山に松九三石七六の各丸太をも占有し七倉山杉七八石九、松二〇二石六九、石塚山松九〇石六九と詐わつて検知報告し此差材積を横領したというに在るところ横領の対象は個々の物たるべく又物たるには他から有形的に区分された特定的存在たるを要するから所謂集合物たる多数丸太中の一部を特定するに石数を挙示しただけでは横領した丸太と然らざるものとを区別することができない。此部分訴は無数であるが之と判示一の罪とは一罪でその一部有罪であるから主文では公訴棄却の言渡をしない。

(裁判官 中村貞一)

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